M&Aにかかる時間

M&Aも売買契約の一つです。ただ、売買対象が企業や事業といったものであるため、取引金額も数億円にのぼり、上場企業のような大企業では数千億から数兆円などになる場合もあります。そのため、食品や衣料品といった日用品のように、店舗で売手側・買手側双方の意思だけで、その場で決まってしなうような性質の売買契約というわけにはいきません。
　M&Aによる企業や事業の売却を考え、実際にこれらの引き渡し、代金の受け取りまでに必要な時間は、一般的には3ヶ月から1年かかるといわれています。この期間よりも短くなったり逆に長くかかる場合もありますが、対象企業とのマッチング(相性)やコスト、その他の事情を考えて、通常は3ヶ月から1年の期間で落ち着くようです。
　それではもう少し詳しくM&Aと、それに要する時間について見ていくことにしましょう。

M&Aにかかる時間はそれくらい？

　前述のように、M&Aも売買契約の一種ですが、その対象が企業や事業といった特殊なものであるため、その手続きのプロセスも通常の売買契約とは大きく異なったものであり、成約までに相当な時間がかかってしまいます。

M&Aプロセスと所要時間

　M&Aのプロセスの一般的な流れは、以下のようになります。

　これらプロセスでもメインとなる、④の面談と交渉に2〜3週間、⑤の意向表明・基本合意契約とデューデリジェンスに4〜5週間、⑥の最終譲渡契約とクロージング(決済)に4〜5週間となり、合わせて3ヶ月前後の期間を要します。これに買手候補企業探し(マッチング)まで含めると、3ヶ月〜1年といった時間がかかってしまうことになります。

M&Aアドバイザー、仲介者選びとM&Aにかかる時間との関係について

　M&Aにかかる時間は、M&Aアドバイザーや仲介者といったM&A事業者との関係にも左右されるところがあります。
　まず、M&Aアドバイザー、仲介者との関係で注意しなくてはならない点としては、その報酬体系です。M&Aアドバイザー、仲介者といったM&A事業者と報酬には、「着手金」、「中間金」、「成功報酬」、「リテイナーフィー(月額料金)」があり、これらを組み合わせたパターンが複数あります。

　これら報酬パターンの中で特に注意すべき点は、②の「着手金」＋「成功報酬」型、④の「完全報酬」型、⑤の「リテイナーフィー(月額報酬)」型です。
　②の「着手金」＋「成功報酬」型では、高額な着手金をとったあとはM&Aを真剣に行おうとせず、1年経っても2年経っても買手側候補を紹介しない事業者もいます。同じように、⑤の「リテイナーフィー(月額報酬)」型も、毎月の手数料が目的のためM&Aを先延ばしし、1年以上経ってもM&Aが終了しないといったことが起こってしまうこともあります。
　逆に、④「完全成功報酬」型では、M&Aが成約しなければタダ働きですから、双方企業のマッチング（相性）など考慮せず、1〜2ヶ月といった短い間に早く成約させてしまおうとする事業者もいます。
　M&A事業者の経験や信頼といった面でも影響があります。経験があり信頼も厚い事業者には、多くの売買案件があります。そのため、売手側・買手側企業間のマッチングもスムーズに進み、その分時間も短縮できます。

広義のM&Aとかかる時間はどれくらい？

　今まではM&Aプロセスである経営者がM&Aの意思決定をし、クロージング(決済)により、一応の終了までに要する時間を見てきました。しかし、M&Aとはクロージング後からが本格的なものとなります。そのため最近では、M&Aをクロージング(決済)後の事業統合(Post Merger Integration= PMI)までを含めた期間とするものも多くなってきました。通常、M&Aによる効果から本来の目的が達成されるまで5年ほどかかるといわれています。そのほかにもM&Aを意識し、少しでも高く売却できるよう企業の実績向上に取りかかる期間まで含めた、最広義のM&Aともいうべきものも含めれば、M&Aといったプロジェクトは10年前後かかることもあるということです。

　以上のように、M&Aには相当な時間を要することを念頭におき、事業統合する時期から逆算して、早めに準備しておくことが必要です。