M&Aは、企業や事業を対象とした売買契約です。そのため一般的な売買と違って、多くのプロセスを経て進められます。それぞれのプロセスに高度な専門知識やノウハウが要求されるため、売手側・買手側といった当事者間で行っても、途中で話し合いがブレイクしてしまうことが多々あります。
 そこで、M&A仲介会社に依頼することになるのですが、M&A仲介会社にもいろいろなものがあります。一般的にはM&Aアドバイザーなど、M&Aを専門に扱う仲介会社に依頼することが多いようです。そのほかにも、公認会計士や税理士といった専門士業、銀行などの金融機関、証券会社、経営コンサルタントなどに依頼することもあります。
 M&Aは売買対象が企業や事業といったものですから、取引金額も数億円から数百億円、あるいはそれ以上になることも珍しくはありません。そのため、こうした案件を扱うM&A仲介会社への手数料や報酬も相当高額なものになります。
 そこでM&A仲介会社の事業者選びが重要になってきます。選ぶ際に注意すべき点は、すぐに依頼してしまうのではなく、十分な事前相談を行い、自社との相性を見極めることです。
 先にも述べましたが、M&Aの仲介会社はM&Aアドバイザーなどの専門事業者を中心に、さまざまな事業者があります。ここでは、M&Aアドバイザーなど専門の仲介会社へ相談する際の注意ポイントについて解説していきたいと思います。
 

M&A仲介会社への相談の際の注意ポイント

 M&Aでは、その成功を左右する重要なプロセスがいろいろありますが、M&A仲介会社選びもそのひとつです。そのため、M&A仲介会社との契約に先立つ相談も、非常に重要な位置付けになります。

M&Aアドバイザーとの相談で注意すべきポイント

 M&Aアドバイザーは、M&Aに関する一連のプロセスを進め、契約を成立させるためのM&A専門事業者です。ビジネス(事業)、ファイナンス(財務)・税務、リーガル(法務)、人事・労務、ITなどの幅広い知識を持って、M&A成約に尽力します。M&A仲介業者との契約いかんで、その後のM&Aの行方が決まってしまうと言って過言ではありません。そこで、こうした事業者との契約に先立つ相談がとても重要になります。
 というのも、M&Aアドバイザーなどの仲介業者の歴史は浅く、また業界を規律する明確な法も整備されていないのが現実です。そのため、さまざまな仲介事業者が割拠して玉石混交の状態なのです。
 相談する上で注意しなければならない具体的ポイントがありますので、主なものをあげていきます。

M&A仲介会社としての理念

 M&A業界がまだ歴史も浅く、いろいろな事業者があるからこそ、仲介会社として独自のM&Aに対する基本理念・コンセプトといったものが重要になります。
 事前の相談では、各々の仲介会社がこうしたことを明確に自覚し徹底しているか十分確認しておくことが大切です。

自社とのマッチング(相性)はどうか

 明確なM&A仲介会社の基本理念・コンセプトを前提として、自社との経営理念、特にM&A戦略上の目的とのマッチングや整合性についての話し合いが必要です。この場合、M&A仲介会社・事業者といった組織だけでなく、実際にM&Aプロセスを遂行していく担当社員との相性についても見極めることが重要です。

M&Aの実績はどれくらいあるか

 比較的新しいM&A業界ですが、ある程度の仲介会社では累積成約件数が数千件を数えるところもあります。ただし、累積件数の内容について検討を加える必要があります。M&A仲介会社も得意とする業種と、そうでない業種がありますから、自社の業種や経営規模の案件について、どれくらい実績があるかチェックすることです。

報酬体系や算定基準について確認する

 M&A仲介会社の手数料や報酬については、「着手金」、「中間金」、「成功報酬」、「リテイナーフィー」等いろいろなものがあります。そしてこれらの手数料・報酬を組み合わせ、独自の報酬体系を設定しています。また、報酬算定基準の取引金額についての考えも相談時の大きなポイントです。事前に十分確認しておかないと、M&A成約時にとんでもない金額を請求されかねません。

提供する業務の範囲を把握しておく

 M&Aは、複雑で高度な知識・ノウハウを必要とする多くのプロセスを経る取引ですから、自社のM&Aを成功させるためには、提供する業務範囲を確認しておかなければなりません。クロージング(決済)で終わるのか、あるいはその後の事業統合(PMI)までも支援してもらえるのかで、M&Aの効果は違ったものになることも考えられます。
 その他、相談時に注意すべきポイントとしては、専任か非専任かの契約形態、アドバイ
ザリー方式か仲介方式かの依頼方式の確認、そして機密情報の取り扱いについての確認などがあります。

 M&A仲介会社選びは、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。そのため FA契約といった業務委託契約に先立つ相談はとても重要プロセスとなります。注意すべきポイントを押さえながら話を進めていく必要があります。